先週、学生時代の友達と日帰り温泉へ行ったのだった。
結婚して、こちらに住んでいる彼女とは、4年ぶりに会う。
メールに「いろいろ話聞かせてねー」って書いてあったのは、まちがいなくわたしの離婚の顛末についてなので、ちょっとだけ気が重かった。
高校や大学の頃は、お互いの恋愛話を一から十まで逐一報告しあった仲ではあるけれど、話すためには思い出さなければならないし、思い出せばまたこころが揺らぐだろうし。
「まあいろいろあったのよー」で、お茶を濁そうと思って行ったのだが、意外にもわたし、いろいろと語ってしまった。語りながら、ああ、うん、そうだったなあって、少しずつこころの整理ができてくような気さえした。

離婚の理由は、一言では言えない。
じわじわと澱のように溜まっていった小さな不満や失望に、気づかないふりをして暮らしていて、どこの夫婦だってそんなもんだと思おうとしていて、でも、ひとつのきっかけがあり、急速に「ほんとにこのまま、このひとと暮らしていって幸せなのかなあ…」っていう気持ちが、膨れ上がっていったのだった。
きっかけは、わたしの病気。
ひどい痛みで一晩中眠れず、床にのたうちまわっていた朝、元夫は淡々と自分の出勤の支度をしながら、こう言った。
「えー。そんなに痛いのー?仕事行けるの?」
「…仕事、どころか、うごけない…」
「ふーん。じゃ、どうすんの」
「…(痛みで何も言えない)」
「どうすんの。救急車でも呼ぶの」
「…(うなずくだけで精一杯)」
その時、元夫がセットしてたトースターが、チン!と音をたてた。
元夫は悠々とトーストを取り出しながら、
「ほんとに救急車、呼ぶの?」
と、わたしを見下ろしながら、言った。
寄り添って身体をさすってくれるわけでもなく、かがんで顔色を見てくれるわけでもなく、パンを片手にして、立って、見下ろしていたのだ。
3日も前から、ずっと痛みを訴えていたのに。
わたしたちには子供がいないから、老後はふたりっきりで暮らすことになる。
このひととふたりっきりで、老いていくのは、不安だと思った。
10数年の生活の中で、何度も感じてきた、小さなことだけど冷たいところ、どんどん思い出した。

…っていうようなことを、友達に話すと、
「え、理由はそれだけ?」
みたいに言われてしまい、苦笑する。
「まあ、それが始まりで、どんどんこころが離れてって、お互いべつのひとに気持ちが移っちゃったりして、修復しようと試みたけども、だめだったっていうことよ。」
と、その辺りは、さらっと流してしまう。ずるかったかな。
「もしも子供がいたら、それでも別れた?」
「どうかなあ。子供がいたら我慢できた『その程度のこと』なのかもしれないねえ。でも、いなかったからさ。今後何十年も、ふたりで生きてかなきゃいけないからさ。」
38でお見合い結婚し、39で出産し、今は幼稚園児の母となった友達は、ふぅん、と呟いて、黙る。
「ひとりになって、わたし今とっても、お気楽極楽なんだよー。ひとりぐらしが合ってるみたい。しゅーとめの借金も親戚の借金も被って、わたしたち夫婦で返済して、その上毎月10万円の仕送りして、介護したとはいえないけど、毎週末3時間かけてしゅーとめの病院に通って、病院代も葬式代もぜーんぶ払って、ヨメとしての仕事は全うしたと思うもん。もう、いいかなって、思ったもん。」
陽気に、かるーい感じでそう言って、彼女の話の方に水を向けた。
子育ての話、よめしゅーとめの話、夫の愚痴、そういうのを聞いて、笑ってうなずいて、時々自虐ネタ(相手がいてこその愚痴だわねぇ、こいつめー。とか)も盛り込んで、ひとしきりお互いの近況を伝え合ったあとは(って、そこまでに2時間くらい要したわけだけど・笑)、昔話。思い出話。共通の友人たちの消息や、罪のないうわさ話。

そして思った。
あれこれ話題は飛んで、四方山話をたくさんしても、わたしは今の恋愛について彼女には話すことができないんだなって。
他の友達にも、もちろん家族にも、誰にもできない。
この恋愛にわたしは救われて、濃密な幸せを感じているのだけれど、誰にもいえない。
でも、ほんとは誰かに聞いてほしいんだ。
わたしが今感じている幸せや、驚きや、嬉しい困惑やなんかを。
だからこうして過剰なほどに日記に記録しているんだなあ。。。

コメント

Mimi
2009年8月31日21:02

蜜桃さん

書いてくれて、ありがとう。
すごく良くわかります。
わたしも...です。

蜜桃
2009年8月31日22:09

Mimiさん。

こちらこそ、いつも読んでくださって、ありがとう。
Mimiさんの日々、たくさん綴っていってください。
共感したり、羨望したりしつつ、たのしみに読んでいます。

la vie en rose
la vie en rose
2009年8月31日22:39

蜜桃さん^^

蜜桃さんのDNはいつも湯気が立っているみたい。
出来たてほやほや。

拝見しながらいつも懐かしい気持ちになります。
ここにいっぱい想いを綴って下さい。

蜜桃
2009年9月1日9:34

la vie en roseさん

ありがとうございます。湯気、出てますか?(笑)
今はまだ、確かにほやほやなんですもーん♪
きっといつかはなくなっちゃうあったかさなんだけれど、
だから覚えていたい、残しておきたい、です。

蒼月しおん
2009年9月2日9:45

蜜桃さん おはようございます。

日記・・いつも切なく拝読させていただいております。

色んな意味で 誰にもいえない想い・・
私にもあるなぁ・・なんて、呟きながら
読ませていただきました。

蜜桃
2009年9月3日23:43

しおんさん、お久しぶりです。
お忙しいのに、コメントありがとうございます。
お返事が遅くてごめんなさい。

わたし、うろうろと落ち着きなくゆらぎつつ、
全く予想もしなかった、ときめきの日々を過ごしています。
こういうときめきを誰にもいえないのって、やっぱりさみしいんですよね。。。
読んでいただいてありがとうございます

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