いつもの時間に起きて、いつもの行程で準備して、いつもの時間に部屋を出る。
風邪が抜けきれてなくて、頭がぼーっとする。
今日は紙ゴミの日。明日は不燃ゴミの日。あさっては可燃ゴミの日。
なーんにも変わらない。あたりまえだ。
あたりまえが嬉しいときと、あたりまえが淋しいときがある。
階段の隅っこの埃に、郵便受けのDMに、ゴミ置き場のカラス除けネットに、こころのなかで話しかける。
わたしさあ、一昨日離婚したんだよー。
もうずっと離れて暮らしてたし、もうずっと指輪も外していたし、これからも苗字は変わらないし、だからきっと言わなきゃ誰も気づかないでしょ、でも、離婚しちゃったんだよー。
埃もDMもネットも、聞いてやしない。あたりまえだ。
ああ、ぼんやりする。

出社して、本当は上司に離婚のことを報告しなくちゃいけなかったんだけれど、言わなかった。なんだか面倒で。
今日はもう、埃とDMとネットに伝えたからいいや。つかれた。
外は青空!
けれどわたしは一日中、布団の中にいた。
眠っても眠っても、どれだけでも眠れるみたい。

目が覚めたとき、元夫のことを考えてしまう。
昔の、楽しかった頃のこととか。
少し前までは、思い出しかけたら慌ててふたをして、ぎゅうぎゅう押さえていたのだけれど、そーっと取り出してそーっと見つめてみた。
かなしかった。
でも、もう憎まなくていいんだ、と、こころで呟く。
目を閉じて、眠りがまたやってくるのを待つ。
ふいに、冷たい、澄んだ水のイメージが浮かぶ。
コップの水、湖の水、流れてゆく水、湧いてくる水。
それがとてもとても、美しくて気持ちがよかったので、次々にイメージする。
もう憎まなくてもいいんだよ。
そしてまた、深く深く眠る。
昨日書いた日記、感情的すぎだし長すぎだし、かなり独善的だし、読み返すと恥ずかしいけれど、それが昨日の夕方のわたしだったのだから、消さずに残しておく。
そして今日も、今日のわたしを記録しておく。迷わずに。


昨日の夜、夫からメールが来た。
開いてみたら、1行目に「▲▲ちゃん。」と、わたしの名前が書かれていた。
夫からそう呼ばれるのは、本当に本当に久しぶりのことだ。
たったの6行だったけれど、心のある、やさしい言葉のメールだった。
わたしは、泣いて、泣いて、泣き続けた。
また「ありがとう」と書かれてて、やっぱりわたしはまた「何よ」って思う。
夫の「ありがとう」は、「今までありがとう」なので、「さよなら」なので。
でも「何よ」って思いながらも素直に受け入れることができた。

何年もずっと、ぎざぎざした雰囲気でいた。憎みあったり、傷つけあったり、近づこうとしてはねつけられたり、はねつけたり、そんなことばかりしてた。
メールを読んだ時、一瞬、その何年間をひゅっと遡って、まるで昔の穏やかだった二人に戻れるみたいな気がした。そんなことできるわけないけれど。傷つけあって、憎みあったことは消せないし、まだまだきっと許しあえないし。
でも、でも、たくさんたくさん泣いた後、こころがゆるんでいるのに気づいた。
後悔とか怒りとか恨みとか憎しみとか淋しさとかで、ずっーとこころ張りつめて、くたくたになっていたから。
それがゆるんで、ゆっくり溶けてくみたい。
もちろんそれでやり直せるとかじゃないんだけど、「ああ、これで憎み続けなくてすむ…」みたいな安堵感、かなあ。

泣きながら眠って、夜中に目が覚めてまた読み直して泣いて、朝起きたらものすごい顔になってたけど(苦笑)、風邪もひどくなってたけど、頑張って銀行と市役所に行き、印鑑押して離婚届出して、全て全て全て終わった。(銀行の若造の不手際で、もう一度手続きに行かなきゃいけないはずだった書類も、今日届いていて間に合ったので。)
がっくりと力が抜けて、一気に風邪の症状が出てきたところに、会社から電話があり、午後の予定がキャンセルになったので休んでいいよと言われた。お言葉に甘えて、明日まで休みを取った。
薬を飲んで、午後中ゆっくり眠った。夢も見なかった。
とうとうひとりになって、今はまだ気持ちがすうすう寒くて心細いけど、この風邪と一緒に、心細さも治るといいな、治るよねきっと、と思っている。思い込もうとしている。
さあ、あったかくしてまた寝よう。



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心配して、応援してくださったみなさま。
見守ってくださったみなさま。
本当に本当にありがとうございました。
この日記を書き始めたときは、誰かに読んでもらうってこともあまり考えてなくて、ましてや応援していただいたり、こころの支えになっていただけるなんて思ってもいませんでした。だけど、なんとかここまで頑張って乗り切ってこられたのは、わたしのぐらぐらする気持ちをここで受け入れて、応援してくださったみなさまのおかげです。これからも多分、気持ちはくるくる変わって、頼りなくて情けない言葉をたくさん書くんだろうと思いますが、どうぞよろしくお願いします(照)。
1/18(日)
天気予報は当たって、朝から今にも降りだしそうな曇り空。
昨日の夕方、姉の家に帰る途中で夫に「明日、着物の箪笥を運び出したら終わりです」というメールをしておいたら、夜中に返事が来ていた。
「おつかれさまです。ありがとうございました。」って。

何よ。ありがとうございましたって、何よ。
最後に顔を合わせた、8ヶ月前のあの日もそうだった。
義母の法事の帰り道、転勤先の街に帰る前に、一応一緒にマンションまで帰るつもりだったのに「もう一緒にあの部屋に帰りたくない。ここで降りて、帰って。」って言って、わたしを無理矢理駅前で車から下ろしたあの時。
あの時の最後の言葉も「ごめん。ありがとう。」だった。


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着物の箪笥を車に運び出すのはすぐに終わった。
姉と母に「すぐに来るから車で待ってて。」って言って、ひとりで部屋に残る。

リビングの窓からの景色。
ふたりで選んだカーテンや照明。
わたしが買った鉢植えと、わたしの知らない鉢植え。
14年前に買ったふるい冷蔵庫。
地震の時の、床の傷。
食器たち。鍋、菜箸、フライパン。
学生時代から二人で聞いていたレコードたち。CDたち。
貧乏だった頃、ローンを組んで買った夫の楽器。
わたしが使ってたクッション、わたしの知らないクッション。
大好きだった陽気な熊の絵のバスタオル。
わたしが使い古したキッチンミトン。


しーんとした、わたししかいない部屋。


久しぶりに、とめどなく泣く。
ひとりっきりで、子供みたいに、えーんえーんと声をあげて泣く。
もう泣きやまなくちゃ、行かなくちゃ。
母たちが待ってるから、心配してるから。
そう思うんだけど、止まらなくて泣き続けた。
全部の部屋をうろうろと歩き回りながら、泣き続けた。
玄関に行って、靴を履いて、ドアに手をかけて、それでも部屋から出られなくて、また靴を脱いで、部屋を歩き回って。
さみしいよおお。
もう愛してないけど、わたしから離れていったんだけど、でも、さみしいよおお。

涙が止まらないから、仕方ないから、泣きながら部屋を出る。
涙をぎゅっとがまんして母と姉と駅で別れ、ひとりで電車に乗ってからまた泣いてしまう。
夫あてに、「荷物は全部出しました」っていうメールを書き、出せずにしばらく泣いて、少し落ち着いてから、最後に、20年以上呼んでいた名前を書く。
△△ちゃん、ありがとう。元気で。
って。
ここのところずっと「あなたの印鑑証明を…」とか「あなたの実印を…」とかだったからね。最後にもう一度、そういうふうに呼んでみたかったんだ。
メールだけどさ。



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電車が街を離れていくにつれて、涙は止まり、少し落ち着いてきた。
頭痛と、疲れと、さみしさと、痛みは残ってるけど、大丈夫。
終わったなあ。
終わっちゃったなあ。
明日、離婚届を出したら、本当に本当に終わりだ。
これからひとりで生き直さなくちゃ。
がんばらなくちゃ。

あーあ。












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さて。
今から悪口を言いまーす(笑)






何よあの、クロゼットの中の趣味の悪い服!
安っぽいコート!へんな色のバッグ!さいあく!
夫婦茶碗は新しく買ったくせに、汁椀はわたしのをそのまま使うなんて、どーいう神経してるのよ!デリカシーなさすぎ!
カップボードのウェッジウッドやジノリ、積み重ねて置くなんて!
わたしと同じ化粧水使ってるのも気に入らない!
トイレに芳香剤置くのも、わたしだいきらい!
だいきらい!だいきらい!
あんたたちなんか、だいっきらい!!




あーあ、コドモか、わたし(笑)
1/17(土)
8ヶ月ぶりに、夫と暮らしていた部屋へ行く。

駅からまっすぐ、酒屋の角を曲がる。そこから見えるわたしたちの部屋の窓。
何年もの間、毎日この道を歩き、この角を曲がり、窓を見あげていた。
同じ形の窓が並んでいる、右端の、上から5番目。
部屋の灯りが点いていない夜が、淋しかったのはいつまでだったかな。
もう、忘れちゃったな。
いつからか、灯りが点いてると憂鬱になったんだったかな。忘れたよ。
そんなことを思いながら歩いていく。
朝だから、もちろん灯りは点いていないし。
約束どおり、あのひとは部屋にいない。

しーんとした部屋に、ひどく緊張しながら入る。
わたしが一番大事にしていたアンティークの硝子器に、安っぽいチョコレートが入れられて、台所のカウンターに置いてあるのが目に入って、感情が爆発する。
さわらないでよ!!
チョコレートをぶちまけて、いらいらと全ての部屋を見てまわった。
寝室のベッドに並べられた枕とか。
浴室のクレンジングオイルとかローションとかシャンプーとか。
洗面所の棚の化粧水とか、引き出しの巻き髪用のドライヤーとか。
使ってなかった部屋のクロゼットに、隠すように入ってた女物の服とか。
食器棚の、わたしが使ってたんじゃない夫婦茶碗とか。
わかってたけど、やっぱり見たくはなかった。

洗面所の棚に置いていた化粧品や髪飾り、脱衣所のクロゼットの中の下着やハンカチ、引き出しの中のアクセサリー、リビングのチェストに入れてたCD…わたしの物だけまとめて、わたしの個室に置かれていた。署名押印された離婚届と協議書と一緒に。
ふぅん…。
これだけを持っていけっていうこと?
他の物にはさわるなってこと?
わたしの硝子器を勝手にそのひとにさわらせておいて。

いらいらする。いらいらする。いらいらする。
感情が昂ぶっているところに、母から「渋滞しているから少し遅くなりそう。」と電話がかかってきて、ひどく冷たい受け答えをしてしまう。そして自己嫌悪に陥る。せっかく手伝いに来てくれるのに、心配してくれているのに。
女のひとが出入りしてることなんか、とっくにわかってたことなのに。

化粧品や下着は、迷わずゴミ袋に入れる。
置いていた服も、ほとんど捨てることにする。
本も処分してしまおう!と決心して、リサイクル業者を呼んだ。
400冊くらい売り払って12700円。
どうしても捨てる決心のできない100冊くらいは、母宅に預けることにした。
食器はほんの僅かだけ。
独身の頃、金沢と西荻窪のアンティークショップで、それぞれ買った硝子器。
父方の祖母から受け継いだ鉢。
幼稚園の頃からお気に入りの、撫子柄のマグカップ。
小学生の頃からお気に入りの、レトロな洋食器3点セット。
大学1年の時、好きだった人からプレゼントされた器(その中に花と手紙を入れてくれたんだった)。
それだけ持っていく。
他にもたくさん、大切にしていた、気に入っていた器たちがあるけれど、思い切る。あの4年前の地震で割れちゃったと思えばいい。思うことにする。

そして。
紙袋の中に無造作にざらざらと放り込まれて、床にぽんと置かれていた、わたしの古いアクセサリーに混じって、指輪の箱があった。
ひとつだけ入っていたのは、夫の結婚指輪。
結婚式の日にしか嵌めなかった指輪。
「指輪してる男って嫌いなんだよね」と、あの頃のわたしは言っていたっけ。
なんだかもう笑い出したいような、手放しでわんわん泣きたいような、腹立たしいような、混乱した気持ちで指輪を眺めた。
他のアクセサリーと一緒に、燃えないゴミの袋に、捨てた。



姉の車に段ボールを積み込んで、着物の箪笥だけは積みきれないので明日取りにくることにした。わたしだけじゃなく母も姉もなんだか気が昂ぶっていて、全然関係ないどうでもいいことを、声高に喋りながら姉の家へ帰る。
ものすごい大きさの、まん丸の、鮮やかな夕日を見ながら、女三人で姦しく喋りながら帰る。
家族って、なんて心安いんだろう。
なんてありがたいんだろう。
夫とわたしだって、一時期は家族だったはずなのに。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
そう思うけど、もう考えることはしない。
まだ時々痛む傷口、その痛みの記憶を、今は反芻しない。
寒気がして、咳が出て、頭が痛い。
これは間違いなく風邪だろうなあ…。

明日は早起きして、長年暮らしたあの街へ行く。
ふたりで暮らしたあのマンションへ行く。
でも、あのひとには会わない。
会わずに、荷物と離婚届を持って帰ってくる。


明日と明後日で荷物整理をしたら、もう鍵を返さなくちゃいけない。
二度とあの部屋には入れない、入らない。
自分の服や本は迷わず持ってくればいいけれど、食器類はちょっと迷う。
3年前に家を出たときは、いつか帰ってくるつもりだったから、最低限の一人分しか持ってこなかった。お気に入りのワイングラスも、アンティークの食器も、祖母から母経由で受け継いだ器も、全部置いてきた。
結婚してから少しずつ買い揃えていったものもたくさんある。
迷うけれど、本当に本当に大事な、結婚前から使っていたものだけを持ってこよう。普段使いの器は、たぶん、別の女のひとが使ったみたいだし…。それに気づいた時には、比喩でなく本当に、少し吐き気がしたっけ。
明日はまた、見たくなかったものを見ることになるのかもしれない…。
でも、もう最後だから。最後だから。最後だから。
頑張ってきちんとやりとげなくちゃ。
どうか発熱だけはしませんように!!
今日もまた銀行のダメダメ担当者から電話が。
またもや別の書類に実印を押しに来いという。
どうなってんの?なにやってんの?この土壇場になってなに言ってんの?
何の書類かというと、住公とは別に少額だけ組んでいた銀行のローン関係。
えーー?!なんで自分のとこの書類を忘れてたわけ?信じられない。
「私も仕事しているので、そんなに何度も休みを取れません。今度の月曜日にまとめて下さい!」
と、さすがに怒りモードで言ってみたが、まったく煮えきれず
「検討して折り返します。」
と。折り返されたのは2時間後くらい。
結局月曜には間に合わないので、また後日にまとめましょうかと言う。
月末までの最終的な手続きも間に合いそうにないので、少し伸ばしましょうかと言う。
あーんーたーさーー!!いいかげんにしなさいよ!!
あんたが月末までっていうから、こっちは焦って動いてんじゃないのよー!!
…とキレられないのが、お金を借りている身の弱さなのだが、コイツ個人に借りているわけではないので、腹の虫は治まらない。ああ。いらいら。

来週の月曜日に全てが終わると思っていたのに。
やっと、やっと終わると思っていたのに。
でももう決めたから、離婚届は月曜日に提出しようと思う。
月曜日、1月19日は父の命日なのだ。
わたしが生まれ変わるのを、きっと父も応援してくれると思うから。
あと少し。もう少し。



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ところで明日は上司のお供で某社の新年交流会へ出席することになった。
上司がわたしに
「蜜柑さん、いつものように欠席、だよね?」
と言うので、
「えーと、行ってもいいです。行ってみようかな。」
と答えたら、すごく驚かれた。
こういう会合には今まで全然参加していなかったので。
これからしばらくは、あたらしい場所に行ったり、初めての人と話したり、そういうことを面倒がらずに積極的にやっていこうと思う。
慣れた場所、楽な場所にばかりいたら、独善的になりそうだから。こころがいびつになりそうだから。それは怖いことだから。
いきなり心を開いたりはできないけど、少しずつ人に接することに慣れていこうと思う。(普段わたしと接しているひとは、わたしがこんなこと考えてるなんて、思いもよらないだろうな。人見知りしない、あかるい、さばさばしたタイプとして認識されているからなあ…。わたしって嘘吐きだ・笑)

Xデー

2009年1月13日 日常
雪がちらちら降る中を、日帰り出張。
行き帰りは、同僚さん(40代男性・2児の父)と四方山話をしながらのドライブ。
途中で道の駅に寄り道して、美味しい酒の肴を買ったりして。
同僚さんちの子供さんの、「お受験」の話だとか、常日頃縁のない世界をいろいろと垣間見て面白かった。

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会社に戻って残業していたら、銀行の例のダメダメ担当者から電話が入る。
銀行の不手際で、もう一度実印を押しに銀行に行かなくちゃいけないと言う。
その上、その後の手続きが間に合わなくなるから、あれこれ急いで欲しいと言う。
むちゃくちゃでたらめな敬語で、わかりにくーい説明で(苦笑)。
「はぁ?!」と言いたいところを、「はぁ…」と言って日程調整。
わたしの後輩なら今後のためにびしっと叱るけど、この若造を育てる義理もなければ、クレームつけてる暇もない。はいはい。またわたしが有休を取って、そちらにお伺いすればいいんですね。っていう嫌味を言ったくらい(笑)。
その日は来週の月曜日に決まった。

いらいらしながら家に帰ったら、行政書士からメールが来ていた。
移転登記費用はあちらが持つと言ってくれたらしい。
添付されていた協議書を確認して、はぁ、こんなもんなのかと思う。
A4用紙2枚で終わる、終わらせる、わたしたちの14年間。
ふっと、結婚するときにもこんなふうにいくつかの約束を書面にしておけばいいんじゃないのーなんて思う。神様に誓う永遠の愛なんて抽象的なもんじゃなくてさ。
でも、じゃあ何を約束すればいいのかって言われるとわからないな。
抽象的だろうが具体的だろうが、約束しようがしまいが、壊れていくものは壊れていく。壊さないように大切にしようと、もしも壊れかけたら立て直そうと、お互いが思い続けない限りは。

夫にメールする。
協議書と離婚届用紙を、こちらから明日にでも送付すること。
今週末の土日にマンションの荷物整理に行くから、留守にしておいてほしいこと。
その時に協議書と離婚届を持って帰るから、署名押印しておいてほしいこと。
それを持って、わたしが月曜日に離婚届を提出に行くこと。

送信して1分と経たないうちに返信が来た。
「了解しました。よろしくおねがいします。」
って。

来週の今頃には、なにもかもが終わっているということだ。

休日

2009年1月12日 日常
今日は一日家から出ない。
最初からそう決めていたから、ぐらぐらしないはずだった。
掃除して洗濯して、料理して食べて、ストレッチして雑誌を読んで、DVDを2本見て。見終えたらすっかり外は暗くて。部屋の中も暗くて。
ひとりだな。と思う。揺らぐ。
慌てて部屋の明かりをつける。
うん、ひとりだよ。いつものことじゃないの。
虚しくならないこと。虚しくなっちゃだめ。
自分に言い聞かせて、料理して、食事する。大丈夫。大丈夫。
大丈夫だけど、早く明日になるといい。

かりっと寒くて上天気の休日。
洗濯をして、あさごはんを食べて、今日はコーヒーじゃなくホットミルクを飲む。いちごを食べながら。いい気分。


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午後からエステに行く。
バレーボール選手のように健やかで伸びやかな体の奥に、迷子の子供のような不安げな心をもった、21歳の担当Tちゃん。最近はすっかり仲良しになっているわたしたちなのだ。毎回毎回このおばさんに向かって「最近カレシ関係どうですかぁ?」って聞かれるのも定番なので慣れてしまったし(笑)。
今日、Tちゃんに聞いた話。
少し前にようやっとできた23歳のカレシが35歳の人妻と付き合いだして、“今はどうしても別れられない状態”になり、Tちゃんはふられそうなのだとか。
もうそいつはやめときな。そんなややこしいことに関わってないで、別の男の子みつけて、健やかな楽しーい恋愛しなさいよ。
おばさん然としてきっぱり言ったけど、言ったことは本心だけど、正直思ったことは「ああ全く。老いも若きも、なんてこの世の恋愛はややこしいことばかりなんだー」ってことだった(笑)。
Tちゃんは、「そうっすよね。はっきり言ってくれて、ありがとうございます。」と言って、ちょっとしゅんとしてから、「もー!別れるけど、もうだめだと思うけど……夜が淋しいんすよ!」って笑った。
あらあらまあまあ。夜が淋しいときたか。
おばちゃんなんかなー、もう3年も一人で寝てるんだからなー(苦笑)。
次回の予約をする時に、4月からは転勤でいなくなると思うからって言ったら、「いやだー。蜜柑さん、どこにも行かないで下さいよー!」って泣きそうになってくれた可愛いTちゃん。健やかなカレシが、早くできるといいねえ。



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昨夜久しぶりにあの子から電話があった。
飲み会の帰り道にしか電話してこないの、もうわかってるんですけど(笑)。
わたしが一歩踏み出せば(一歩ゆるめれば?)、すぐに寝ちゃえるようなバランスでいる感じのわたしたち。会話の途中でいいタイミングがあったから、「だって既婚者でしょう?前途有望な有能な若いひとの、仕事のキャリアに傷をつけるわけにはいかないから、絶対しませーん♪」って明るく言っておいたけど、おばさんだって淋しいんだからー。危ないんだからー。
ちゃんと自制しなくちゃ。離婚から何も学べなかったのか?って思わないように。
淋しいけど、淋しいけど、淋しいけど、体温だけに流されないように。
それが愛だったら、越えざるを得ない堰もあるのかもしれないけどね。

ちらちら

2009年1月10日 日常
仕事の合間に、窓から雪を眺めた。
積もるといいのに。
と思ったけど、すぐにやんでしまった。
しんしん降り続く雪を眺めたい。
積もっていくのをずうっと眺めていたい。
音が雪に吸い込まれていくみたいな、あの特別な感じ。
もうずいぶん味わっていないなあ。
思い出すいくつかの夜。いくつかの明け方。
交し合ったあまい言葉とか、ぎざぎざな言葉とか。
思い出すなあ。
いろんなことが終わり始めた4年前の冬は、
この南の町でも、たくさん雪が降ったんだった。

あーあ。
雪見酒でもしに、遠い知らないさむい街へ出かけたいなあ。

海千山千

2009年1月9日 日常
仕事仕事仕事。
報告書を書くの、それほど苦手でも嫌いでもないんだけど、先日の部長からの赤点を思い出し、筆が進まない。またあれこれと、けちつけられるの、口惜しいんだもん。
上司が変わると、指示があれこれ変わる。
先月まで「そこは迅速にさらっと流して」だったのが、ヒトが変わると今月から「慎重に厳格に」になったりする。句読点の打ち方、言葉の選び方、テニヲハまで自分好みじゃないと突っ返すヒトもいた。
ま、いいんですけどね。わたしら下っ端ですからあ。
突っ返されないテクニックを身につけた頃、また上が変わるんですけどね。
本質の根っこの部分で、上のヒトも下っ端も、みんながこの仕事を本気でやってるんだと思えれば、文句言われて、愚痴言いながらも頑張れる。
なーんてことを言えるようになるまで、ずいぶん長い年月がかかりましたが。
20代はもちろん、30代半ばまでは、ロッカー室でひっそり泣いたりしましたが。
夫の実家のあれこれと重なって、病院通って抗鬱剤飲んでた時期もありましたが。
ああ、よかったなあ、大人になって。楽になって。
海千山千のおばさんになって。


でも、4月から希望している転勤先に行くことになったら、全く違う部署の全く違う仕事になるのだ。しかも我社で一番忙しくて厳しい部署。きっと初めはなんにもできなくて、若いコに馬鹿にされたり、上司に叱られたりして、久しぶりにロッカー室で泣いたりしちゃうかも(笑)。
怖くて不安でもあるけれど、頑張って、できないことができるようになることが、そうしてつよくなることが、どんなに自分を生きていきやすくするか、身をもって知っているから、大丈夫だろうと思う。頑張れるだろうと思う。
そう信じてる。自分を。



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なんてねえ。
あーあ。
仕事だとこんなに前向きに頑張れるのに、どうして人間関係は下手っぴなんだろう、わたし。もっと大人になれよー、わたし(笑)
午後から有休を取って銀行へ行く。
署名して実印をいくつも押して、これでもうすっかりマンションの債務はわたしの手から離れたのだ。
ばんざーい……と、自分を鼓舞しようとしたけれど、特段の感慨は湧いてこなかった。そりゃまあそうだ。見た目、ただの紙切れだもの。
むしろ夫の方が感慨深いかもしれない。わたしの分の借金も背負ったんだから。
人気がある街の、駅から4分の物件を買っておいてよかった。
あまり値崩れしないだろうから、困れば売ることもできるでしょう。
でも…。
もう愛してなんかないけれど、夫には落ちぶれたりしてほしくない。
いつまでも格好つけて、飲み屋のオネエサンたちにモテてればいい。
もう関係ないから、嫉妬もないから。好きに楽しくやってたらいい。
落ちぶれてしょぼくれた姿なんかは、見たくない。
どっちにしても見ることはないんだろうけど。


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うきうきもせず、淡々と街をあるく。
なんだかつまんないな。うきうきしたいな。何をしようかな。
と、考えて、ひとりで寿司屋に入った。
カウンターには70代のおばあちゃま二人連れと、50代&20代の母娘連れ。
平日午後の寿司屋って、こんな雰囲気なんだ。知らなかったな。
おばあちゃま方と母娘さんとの間にちんまりと挟まって、わたしはおひとりさまで黙々とおいしいものを食べた。
車で来るんじゃなかった。
美味しい日本酒をちょっと飲みたかったなあ。

少しだけたのしくなったので、バーゲンを見てあるく。
50%off!!の文字に誘われて、あれこれと買ってしまう。
だって冬はまだ2ヶ月もあるんだし!
きれいなお洋服はわたしをつよくするんだし!(たぶん・笑)

さーて、明日からまた頑張って労働しましょうっと。

終わったら

2009年1月7日 日常
新年早々、仕事がやけに忙しい。
年末に、なんだかんだと言い訳してさぼってたツケがまわってきたのだ。
この3日間で、すっかり疲れ果ててしまった。
やはり年齢とともに、体力はどんどん落ちてゆくのよね…と弱気になる。
あーあ。
なにかわくわくすることはないかなあ。
何もかもすっかり終わったら…!!って、よく思うけれど、本当のところ、離婚が成立したからって、劇的に何かが変わるわけでもないんじゃないの?
2年8ヶ月ひとりで暮らしてきたんだし、面倒だから初対面のひとにはもう「バツイチです」って言ってるし。
うーん………。

でも、でも、劇的には変わらないかもしれないけれど、きっと、何かは変わるはず。それを楽しみにして、もう少しだけがんばろう。


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今日は離婚届に添付するための戸籍謄本が届いた。
婚姻日、平成6年7月4日と記載されているのを、しみじみと眺めて思い出す。
婚姻届出しに行くときも、わたしひとりだったなあ。
わたしから好きになった。
わたしから結婚したいって言った。
そしてわたしから終わりにしたいって言った。
あのひとは自分からは何も言わない。何もしない。
わたしを束縛しない、やさしいひとなんかじゃなかった。
面倒なことを何もしないひと。
ふたりで生きることを楽しもうとする気概がないひと。
手をさし伸ばそうとしないひと。
壊れてゆく関係を立て直す努力もしないひと。


…あ、いろいろ思い出して書いてたら元気がちょっと出てきた(笑)。
別れて正解なんだ、ぜったい。
何もかも終わったら、終えたら、きっとわたしは今よりどこかよくなる。
劇的に美しくなる、なんてことはないだろうけれど、笑顔のすてきな、よく笑うおんなのひとになりたい。だから今、がんばれわたし。
仕事始め。
このだらだらした数日間で、制服のスカートがちょっときつくなってたのは、覚悟していたとはいえ、悲しい。
ああ。低きに流れるのはなんてかんたんなんだろう。
もっと足掻かなくちゃ。ジムにしっかり通わなくちゃ。
自分を愛するために、自分に自信を持てるようにならなくちゃ。磨かなくちゃ。
からだだけじゃなく、こころの中も、あたまの中も、人間関係も。


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夫と事務的メールを交わす。
でもその最初にはやっぱり「あけましておめでとうございます。」って入れる。
愛しあってなくても、礼儀は大事だもん。挨拶は大事だもん。
夫からの返信にも、まず「あけましておめでとう。」って書いてあった。
なんとなく、くすっと笑ってしまった。
笑えるような内容のメールじゃないんだけどねえ…。

夫からの返信を読んで、「あーなんか誤解しているな」と思ったから、きちんとこちらの真意を伝えるべく、もう一度返信した。
もうふたりの関係は終わるんだから、どうでもいいと思えばどうでもいいし、逆に角を立てようと思えばいくらでも立てられる。少し前のわたしならきっと「もうどうでもいいや…」って思って、黙ってひっそりと、怒りや失望や悲しさをこころの隅っこに蓄積していってたんだけど。
なんだか今日は、そのままにしておくのが嫌だったから。
夫からの返信には、誤解を認めた上で「すみませんでした。」って書いてあった。
あ。
なんか嬉しい。
なんだかさあ、こういうのが、人間同士の会話だよねえ。
そう思った。
わたしたちが、この数年すっかり下手っぴになっていたこと。
どうしてかな。
どうしていつのまにかあんなに、言いたいことや言わなきゃいけないことを、言えなくなっていたんだろうなあ。
もしもこの先いつか誰かと恋をして、たくさん話をして、思いを伝え合って、長い時間一緒にいられるようなことがあったとしたら、ゆめゆめ油断せず、しつこいくらいなんでも言葉にして、態度にして、伝え合うようにしよう…。
「もういいや」って思ったら終わり。
実家に4日もいると、ひとりぐらしのこの狭い部屋が懐かしくなってしまい、帰りたくなって困った。実家といっても、もうわたしの部屋があるわけじゃないし、義兄はいるし、気を使ってなんだか落ち着けない。母の料理は美味しいし、温泉にもゆっくり入ったし、美味しいお酒もたくさん飲んだけれど、でも、ちょっと疲れた。

今月中に夫との離婚問題は全て決着がつく。
来週には債務引受関係の書類手続きを終え、離婚協議書を作成して夫へ送付し、来週末にはマンションに残してきた荷物を整理しに行き、鍵を返し、再来週には離婚届を提出し、マンションの名義を夫へ変更し、全て、全て、全て、終わる。終える。

きちんと終えて、わたしはあたらしい日々を始めるのだ。
わたしにとっての新年は、半月後くらいからかも。

二度寝してしまい、目が覚めたら9時半!
…あ、でも別にたいした用事もないから平気なんだった。
お布団の中でごろごろする。
このちいさな部屋の掃除は済んでしまったし。
明日の仕事を終えたら実家に帰るので、おせちは作らないし。
出勤前のひとりの朝ごはんに、わざわざお雑煮作る気にもなれないし。
うわー、長閑だ。なんにも準備することがない。なんだか不思議だ。
あかるいうちからビールを開けてしまう。
あーあ。


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義母が生きていた頃は、毎年夫の実家で暮れに餅つきをして、友達がたくさん集まって宴会になって、深夜までおせちやお雑煮の準備をしてた。
結婚した当初は、言葉も全然違う田舎の町で何日も過ごすのがつらかったものだけれど、何年も通ううちに馴染んで、結構楽しめるようになっていった。
義母にも義祖母にも、たくさん可愛がってもらった。
でも、もうみーんな、いなくなっちゃったな。
義母も義祖母も見送って、夫はそれからすっかり人が変わって、いろんなことがうまくいかなくなって、今年はもう誰もいない。
おかあさーん。ごめんなさい。
せっかく教えてくれた、あの味付けのお雑煮、たぶんもう作ることはありません。
ごめんなさい。
酔っ払って、空を眺めながらこころで言う。
そして、わんわん泣く。がまんしないでわんわん泣く。
あのひとは明日、誰かにお雑煮つくってもらうんだろうか。
あの味付け、ちゃんと伝えられたんだろうか。
わたしのことを思い出すだろうか。
わたしは、くやしいけれど思い出してしまったよ。
もう愛してないけど、だからもう作ってあげられないけど。
思い出すことが、たくさんある。
もう愛してないし、愛されてもないけど、長い時間を一緒に過ごしたから、ねえ。



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明日は、来年は、きっといい年になりますように。
つよく、たくましくなれますように。
つよく、きれいになれますように。
ひとを愛する力を、もういちど持てますように。
自分を愛することができますように。

古い夢

2008年12月30日 日常 コメント (5)
今朝は5時起きだったのに、夢を見て夜中に目が覚めて、しばらくねむれなかった。
古い町の、古い古いアパートに、夫とふたりで引っ越してきたという夢。
家具も古くて、テレビなんかチャンネル式で、ベランダの手すりも錆びている。
そのベランダにふたりで並んで、夕暮れの川の土手と電車を眺めていた。
「ずいぶん古いとこに来たなあ。」と、夫が言う。
「ぜんぜんへいき。」と、わたしは笑って言っていた。
「だってこれから始まるんだもーん。」と。

嘘だ、こんなの。
わたし、こんなこと求めてない。もう欲しくない。
いったい何をやっているのだ、わたしの脳味噌は。わたしの無意識は。
わたしはわたしの身を、こころを守るために、必死に戦ってきたのに。
くやしい。
夢の中のわたしが、なんだか満たされていたふうなのが、くやしい。
穏やかだったころのふたりの雰囲気が懐かしかったことが、くやしい。
くやしい。

ぎざぎざ

2008年12月29日 日常
仕事中の車の中へ、銀行から電話。
いらいらする。
今が正念場だ、あと少しだ。
そう思うのだけれど、口調がぎざぎざしてしまう。
もう、こういうの、いやだ。
はやく静かに暮らしたい。
明日は5時起きで仕事なんだけど、そんなことは全然平気。
仕事があってよかった。がんばってきてよかった。
ひとりで生きていける経済力を持っててよかった。
ひとりで生きることを選べてよかった。
だから、もう少しだけ、がんばれわたし。
がんばれー!(と、ヒロトの声で叫んでみる)
ひとりでいるのが性にあってるんだな。

今日も一日、家から出なかった。
100均で買った浪曲のCDを聴きながら掃除をして、休憩してぼーっと空を眺めながらコーヒー飲んで、またいやいやながら掃除をして、疲れたからちょっとうたたねして、掃除に飽きてビールを開けて、冷蔵庫の残り物でつまみを作って、DVD見て笑って泣いて。
さみしいけど楽しい。
さみしいけど楽。
そんなふう。




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で、スイーツを食べるように、昨夜のあの子からのメールを読み返したりする。
控えめな甘さで、なかなか美味。



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